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歯医者で使っている「ゴムのマスク」の役割。ラバーダムとは!?

2021.01.27

こんにちは。今年初めてのブログになります。

歯科医師の佐藤です。

 

ゴムのマスク「ラバーダム」とは、歯科治療時に使う道具のことを指します。

最近は知っている患者さんも多いかもしれません。

見た目は四角いゴム状のシートです。

下図のように、ラバーダムは歯だけが見えるようにして掛けて使います。

 

なぜ使うのでしょうか?

 

吉田らによる日本顕微鏡歯科学会会員に対して行った調査

(Y.Wada-yoshida, M.Suzuki, H.Uemura et al. The Questionnaire for use of Rubber Dam to the member of Japan Association of Microscopic Dentistry. Int J Microdent 2018, 9:86-91.)

では、ラバーダムは根管治療の時に最も使用されています。

その次にレジン築造、レジン充填という順に、使用率が高いです。

 

レジン治療においては、陸田ら

(陸田明智、千葉康史、坪田圭司ら. 環境湿度条件がシングルステップシステムの象牙質接着強さに及ぼす影響. 日歯保存誌 49(4)510〜515, 2006)

によると、環境湿度が高い条件下では、接着強さが低下する傾向が認められ、

接着試験後の破壊形式は、環境湿度が高くなるに従い、

界面破壊例が増加する傾向を示したと報告しています。

湿度が高くなってしまうとレジンと歯との接着力が低下するという事です。

そのため、当院でもダイレクトボンディング治療をする際は必ずラバーダムをします。

 

 

ラバーダムを使う利点としては、

・唾液や歯肉溝浸出液、出血による術野の湿潤・感染防止・乾燥

・切削片や壊死物質、機械・器具等の誤飲・誤嚥防止

・薬液の漏出による口腔粘膜の傷害防止

・切削器具による口腔難組織の傷害防止

・術野の明視と操作性の容易化・術式の合理化

・嘔吐反射を助長しない

・開口の補助

・患者さんの治療への不安感排除

・患者と術者の疲労緩和

・歯肉の排除

(漏洩ゼロをめざすラバーダム防湿パーフェクトテクニック 辻本真規 著(2020) 参照 インターアクション株式会社)

など様々あります。

 

 

使用率が高い根管治療では消毒液を使いますので、

治療時の安全確保や、粘膜保護の観点から

ラバーダムの果たす役割は大きいと思われます。

 

また、術野が明瞭化するため、

我々術者がより正確な治療を行うためにも有効なツールだと考えてます。

 

そのラバーダムがどのくらい使用されているかというと、

根管処置におけるラバーダムの使用率についてですが、

アメリカでは一般開業医と歯内療法専門医で標準的に使用している者は、

それぞれ59%と92%であり、

(Witten BH, Gradiner DL, Jeansonne BG, Lemon RR. Current trends in endodontic treatment : report of a national survey. J Am Dent Assoc 1996, 127 : 1333-1341. より引用)

ラバーダムの使用率はアメリカでも一般開業医は低いですが、

近年日本では、大学の教育や現在のこのような状況もあり、

ラバーダム使用が増えてきています。

 

当院では、このような状況以前から、歯を「残す」ための治療に、

ラバーダムは当たり前に治療で使用しております。

特に根管治療ではほぼ全てのケースで使用しております。

 

歯科医療は日進月歩なので、これからも常に知識や情報を整理し、アップデートしながら、

より良いものを患者さんに提供できるように研鑽して参ります。